NBC長崎放送

2022/02/15/20:00

シンクながさきコラム「物価動向と長崎県経済」

毎週火曜日は、シンクながさき ながさき地域政策研究所の皆さんにお話を伺っています✨
2月15日は、理事長の菊森淳文さんにお話を伺いました☺

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最近、食品スーパーに行って、徐々に値上がりしている商品に気づかれると思います。
私もいくつかのスーパーで買い物していますが、サラダ油やパン、保存食にもな る缶詰や
カップ麺の値段が昨年から徐々に上がってきています。
幕の内弁当とサンド イッチの値段があまり変わらなくなってきています。

食品価格が上がってきたのは、昨年から、小麦・トウモロコシ等、穀物の価格が上が り、
石油・電気等のエネルギー価格や、鉄やアルミなどの金属価格も上がってきてい るので、
特に加工食品の値上がりが顕著になってきています。
世界的に見ても、コロ ナウイルス感染が収まりつつあるものの、
農業・製造業等の生産活動がまだ制約を受 けており、自動車や住宅価格も上昇しています。

アメリカでは、賃金や家賃までもが 上昇してきており、
1月の消費者物価(CPI=Consumer Price Index)が、前年比7.5% も上昇し、
このインフレ懸念から、中央銀行であるFRBは金融緩和政策を転換し、
3月 から利上げを行うことが確実視されています。 日本の消費者物価は、
2021年平均がマイナス0.2%でしたが、2021年12月には0.8%と、 確実に上昇してきています。
これは携帯電話料金の下落を含めた消費者物価上昇率で すから、
携帯電話料金が以前のレベルに戻ると、物価は上昇してくると考えられます。

長崎県の消費者物価上昇率は、2021年春にはマイナス1.0%近辺でしたが、
夏以降、徐々に上昇し、11月には0..2%とプラス圏で推移しています。
物価が上昇して生活が楽になるか、厳しくなるかは、雇用者所得との比較で考える必要があります。
長崎県の雇用者所得は昨年夏以降減少しており、10月にはマイナス2. 2%となっています。
全国の雇用者所得は1.3%のプラスですから、全国と比較しても厳 しいということができます。
消費者物価が上昇してくる中で、雇用者所得が減少する と、生活は厳しくなってきたということができます。

昨年末、今年の経済予測で、今年前半は景気がいいと言いました。
日本や長崎県の景 気自体は暫くはいいと思います。ただ、アメリカや日本の物価上昇が続くと、
年後半 から景気が横這いまたは悪化する可能性があります。いわゆる「悪い物価上昇」で す。
アメリカの物価上昇、利上げが続くと、アメリカの経済成長が鈍化すると思わ れ、
これが日本にも波及する可能性があります。

年初の予測で「晴れのち曇り」と申 し上げたのは、この継続的な物価上昇(インフレ)の可能性があるからです。
ただ、 長崎県については、昨年11月のMICE施設「出島メッセ」開業や、今年秋の新幹線開業 により、
大きく落ち込むことは回避できると考えています。
この点で、「新しい観光」に力を入れつつ、アフターコロナを展望した観光振興に再度、
注力していくこと も重要だと思います。

では、今年の後半から来年にかけて、物価はどうなるのでしょうか。
物価上昇の要因 は幾つかあります。
まず、エネルギー価格の代表である原油価格は、現在95ドルくら いで高いですが、
来春以降は、OPECプラスやアメリカのシェールオイル生産が拡大す るため、
60ドル台へと低下していくと考えられます。
また、コロナウイルス感染が収 束に向かってくれば、
半導体や自動車部品などのサプライチェーンの供給制約が緩和 していくと考えられ、
物価は徐々に安定してくると思います。 これまで日本は、「失われた20年」と言われるように、
デフレ傾向が続いていました が、昨年夏からの物価上昇で、頭を切り替える必要が出てきたかもしれません。
アメ リカやヨーロッパと比べ日本は人口減少・高齢化が進み、低成長国ですが、
物価は国 内要因だけで決まらず、海外の景気や国際商品価格の影響を強く受けます。
かつてイ ギリスが工業からサービス・金融へと産業構造の転換を図ったように、
日本も「強い 産業国家」を構築するべき時に来ているということではないでしょうか。

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来週もお楽しみに🎵

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