NBC長崎放送

2022/03/22/19:00

シンクながさきコラム「半導体の動向と長崎県・佐賀県経済」

毎週火曜日は、シンクながさき ながさき地域政策研究所の皆さんのコラムをお送りしています✨
3月22日は、理事長の菊森淳文さんにお話を伺いました📱

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半導体は電子機器・自動車をはじめ、家庭用の電気製品(エアコン・炊飯器など)に広く組み込まれ、
生活に欠かせないものとなっています。
2021年以降、特に需要が拡大し、価格も上昇してきています。
今回は、それがなぜ起こってきたかを見るとともに、今後どうなるのか、
長崎県経済にどのような影響が及ぶのかを考えてみたいと思います。

半導体とは、電気を通す「導体」と、電気を通さない「絶縁体」の中間の性質を帯びる、
シリコンなどの物質や材料のことです。半導体はマイクロチップとも呼ばれ、
電源・電池によって動くものにはすべて半導体が使われています。
皆さんが日ごろ使っている、スマートフォン、デジタルカメラ、自動車などに使われています。

半導体需要の拡大は、経済の拡大に伴って自然に起こることですが、特に、
コロナウイルス感染拡大に伴い、世界的にリモートライフへの移行が進み、半導体への需要が急増しました。
その後、2021年後半から景気が急回復し、家電製品や自動車などの耐久消費財の需要が増加し、
半導体の需要も急拡大しました。一方で、供給面で生産体制が整わない状態が続いています。
それは、コロナ前から最先端の半導体を製造する生産ラインにシフトしていたので、
自動車や電気製品に使われるコモデテイ(一般的)な半導体の需要に対応できていなかったからです。
トヨタ・日産・GMなどの自動車メーカーは生産台数を削減せざるを得ない状態が続いています。

需要が拡大する一方、供給が制約されているので、半導体メーカーは、昨年夏ごろから、
20%値上げをしました。
世界の半導体の87%は、台湾・韓国・中国で製造されており、地理的に偏っています。
世界のチップの54%はTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)社で製造されています。
日本でもソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(熊本県菊陽町)や
ルネサスエレクトロニクス(茨城県ひたちなか市)などで製造しています。
半導体不足の解消時期については、調査会社ガートナージャパンの予測によれば、
今年4-6月期には解消する見込みですが、世界的な半導体の需要増、コロナ禍による生産への影響、
ウクライナ等の地政学的リスクを考えると、今年から来年にかけて、
断続的に半導体不足が起こる可能性があります。

長崎県は半導体出荷額が九州2位に上昇しています。
九州は1967年の三菱電機の熊本工場進出以降、「九州シリコンアイランド」と言われてきました。
長崎県は第2位で、成長の要因は、工業団地と優秀な人材の存在で、
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(諫早)SUMCO TECHXIV(大村)の存在が
大きくなっています。
また、スマホ向け半導体製造「ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング」の新工場にも
期待したいと思います。
「長崎テクノロジーセンター」と呼ばれる諫早市の工場が21年4月に5棟目の新工場を操業開始し、
さらに新棟の拡張をおこない、22年度半ば以降の稼働を目指していると発表されています。
新興国などのスマホ需要、とりわけ画像センサーによるカメラの性能向上需要に対応する競争に
備えているようです。

世界のチップの54%を製造する台湾のTSMCが熊本県菊陽町に新工場を建設すると報道されていますが、
長崎県・佐賀県のみならず、熊本県・福岡県など広く九州にプラスの影響をもたらすと思います。
九州には自動車工場・電気製品の工場が多く立地しており、半導体の安定的な供給を受けやすくなると思います。また、TSMCの新工場は1,700人規模になると公表されていますが、半導体の専門人材が必要で、
熊本県以外、九州以外からの人材流入が見込まれ、また、大学などと連携した、
技術人材確保・育成が長期的に必要になります。

半導体産業が今後どのように成長していくと考えられるかについては、まず短期的には、
コロナ禍が終息しても、パソコン・テレビ・スマホ・ゲーム機向けの需要がまだまだ拡大するので、
半導体生産は増加すると考えます。次に長期的には、世界的にSociety5.0が進展し、
5Gが導入されて、AIやIoTがますます生活や社会のインフラとして活用されるので、
半導体の需要は、拡大し続けると思います。
また、小型で性能のいい製品が求められるので、
半導体の「微細化」(7ナノメートルから3.5ナノメートル)も進むと思います。

このように需要が高まる半導体ですが、供給面のリスクもあります。半導体は製造国が
東アジアに偏っているので、地政学リスクには十分に気を付ける必要があります。
台湾のTSMCは、これまで台湾・中国に生産拠点を置いてきましたが、
今回ソニーと組んで熊本県に工場作るとともにインテルと組んでアメリカのアリゾナ州に新工場を
建設する予定です。

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来週もお楽しみに🎵

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